1.炭水化物の特徴と働き
炭水化物はヒトの消化酵素で消化でき、エネルギー源となる糖質と、ヒトの消化酵素で消化できない食物繊維に分けられる。
1.糖質の特徴と多く含まれる食品
糖質は、体内での消化や吸収が速く、短時間でエネルギーに代わる重要な栄養素です。主食となる穀物やいも類、砂糖、果物等に多く含まれています。
個の糖質を科学的特徴で分類すると、単糖という物質の結合の数で分けられます。単糖類を基本にして、単糖が2個結合した二糖類、3~9個程度結合した小糖類(オリゴ糖)、10個以上結合した多糖類に分類されます。
糖質の種類と特徴
分類 | 種類 | 特徴 |
---|
単糖類 | グルコース(ぶどう糖) | ヒトの血液中に血糖として一定濃度含まれる |
---|
フルクトース(単糖) | 藤の中で最も甘い |
ガラクトース | ラクトースの構成成分 |
二糖類 | マルトース(麦芽糖) | 麦芽やはちみつ、水あめに含まれる。グルコースとフルクトースが結合したもの |
---|
スクロース(ショ糖) | 砂糖の主成分。グルコースとフルクトースが結合したもの。 |
ラクトース(乳糖) | 母乳や牛乳に含まれる。グルコースとガラクトースが結合したもの |
小糖類(オリゴ糖) | マルトオリゴ糖 | 甘味があるが体内で吸収されにくい |
---|
多糖類 | デンプン | 穀類に含まれ、グルコースが多数結合したもの |
---|
グリコーゲン | グルコースを肝臓や筋肉にためておくときのもの |
2.糖質の消化・吸収
糖質は消化酵素によって、これ以上小さく分解されない単糖となって吸収されます。単糖類のうち、グルコースは主要なエネルギー源でもあり、血液中に取り込まれます。フルクトースとガラクトースは吸収された後、肝臓や筋肉でグリコーゲンとして貯蔵されたす。肝臓のグリコーゲンは必要に応じて、全身へ運ばれてエネルギー源となり、筋肉のグリコーゲンは筋肉の収縮の為のエネルギー源となります。
3.糖質の摂取ポイント
糖質をエネルギー源として利用する場合には、ビタミンB1が必要になります。例えば、ご飯やパンなどを食べると場合、ビタミンB1を含む食品(豚肉、ウナギ、大豆など)を一緒に摂取するとよいでしょう。
糖質は、使われなかった余分なエネルギーが最終的に中性脂肪になって体内に蓄積されるので、慢性的に摂り過ぎると肥満につながります。また、砂糖を摂り過ぎると虫歯が発生しやすくなります。
糖質の欠乏症はほとんどありませんが、欠乏すると、エネルギー不足で体力が低下し、疲労感が脱力感に見舞われます、特に脳では通常、グルコースが主なエネルギー源なので、朝食での糖質抜きは低体温になったり集中が出来なくなったりするので禁物です。
2.脂質の特徴と働き
脂質は体脂肪や細胞膜など、カラダの構成成分になります。高エネルギーのため、効率の良いエネルギー源です。
脂質は非常に多く種類があります。ヒトの体内では、多くが中性脂肪として存在し、主に体脂肪として蓄えられています。
1.脂質の遠く町と多く含まれる食品
脂質は、植物油(ごま油やオリーブ油など)、マーガリン、マヨネーズなどに多く含まれます。そのほか、乳製品(チーズ等)、肉類(脂身や皮など)、魚介類(脂ののったまぐろのトロ、さばやさんまなどの青魚など)にも含まれます。また種実類ではマカダミアナッツやくるみ、ごまなど、油が搾り取られるものに多く含まれます。
脂質の分類方法はいろいろありますが、食物から摂取する脂質の大部分は油脂で、植物性と動物性に分類する事が出来ます。
常温(18℃)で | 液体 | 個体 |
---|
植物性 | 大豆油、菜種油(キャノーラ油)、ごま油、コーン油、オリーブ油、しそ油など | やし油、パーム油など |
---|
動物性 | 魚油 | バター、ラード(豚脂)、ヘット(牛脂)など |
---|
2.脂肪酸の種類と働き
脂質を構成する主な成分は脂肪酸です。脂肪酸には多くの種類があり、それぞれに特有の働きがあります。また、食品ごとに含まれる脂肪酸の種類や量は異なり、体内での働きも異なります。
脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類されます。
飽和脂肪酸とは炭素の結合に二重結合を持たないものをいい、不飽和脂肪酸は二重結合を1つもつものを1価不飽和脂肪酸、2つ以上もつものを多価不飽和脂肪酸といいます。不飽和脂肪酸は二重結合の位置により、n-9系、n-6系、n-3系に分類されます。
また、体内で合成できない、あるいは十分に合成されないため食物から摂取しなければならない脂肪酸を必須脂肪酸といいます。
分類 | 脂肪酸 | 多く含む食品 | 主な作用 |
---|
飽和脂肪酸 | パルミチン酸、ステアリン酸等 | バター、ラード、ヘット | 血液中の中性脂肪、悪玉コレステロールを増やす |
---|
不飽和脂肪酸 | 1価不飽和脂肪酸(n-9) | オレイン酸 | オリーブ油、菜種油 | 血液中の悪玉コレステロールを減らす |
---|
多価不飽和脂肪酸 | n-6 | リノール酸 | 大豆油、ごま油、コーン油 | 血液中のコレステロールを減らす |
γ-リノレン酸 | 月見草油 |
アラキドン酸 | レバー、卵白 |
n-3 | α-リノレン酸 | しそ油 | 血液中の中性脂肪を減らし、動脈硬化と血栓形成を防ぐ。DHAは記憶、学習能力の向上効果がある。 |
ドコサヘキエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA) | まぐろ、さば、さんま、真いわしなどの青魚 |
脂質の摂取のポイント
脂質は脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)の吸収をよくします。そのため、野菜は脂質と一緒に摂取することで、脂溶性ビタミンの吸収率が上がります。
脂質の中でも、酸化しやすい多価不飽和脂肪酸を含む食品(大豆、コーン油など)を摂取する場合は、過酸化脂質を体内に作らないようにするため、、抗酸化作用のあるβ-カロチン(ビタミンA)、ビタミンC・えを含む食品と一緒に摂るとよいでしょう。
4.コレステロールの特徴と働き
脂質の1つにコレステロールがあります。コレステロールは細胞膜やホルモン、胆汁酸などの原料にになり、生命維持のために欠かせないものです。体内で一定量が必要で、必要量の70%は肝臓で合成されてます。残りは食物から摂取します。食物からのコレステロール摂取が多ければ体内の合成量が減り、摂取量が減れば合成量が増え、一定量供給されるように調節されています。
また、コレステロールの一種は紫外線によりビタミンDに変化し、骨へのカルシウム沈着を促進する働きもあります。
コレステロールは脂質でであるため、水に溶けません。体内では水になじむたんぱく質に覆われ、リポたんぱく質として血液に溶け、全身に運ばれます。リポたんぱく質は、コレステロール含有量の比率等によって、カイロミクロン(キロミクロン)、VLDL(超低密度リポたんぱく質)、LDL(低密度リポたんぱく質)、HDL(高密度リポたんぱく質)に分類されます。
血液中のリポたんぱく質の種類と働き
リポたんぱく質 | 働き |
---|
カイロミクロン | 食物から摂取した脂質(中性脂肪)を腸から肝臓や全身に運ぶ |
---|
VLDL | 肝臓で合成された脂質(中性脂肪)を筋肉や脂肪組織に運ぶ |
---|
LDL | 肝臓で合成されたコレステロールを筋肉や脂肪組織に運ぶ |
---|
HDL | 全身の組織から余分なコレステロールを回収して肝臓へ戻す |
---|
すなわち、カイロミクロンとVLDLは中性脂肪を、LDLとHDLはコレステロールを運ぶ働きがあるのです。このため、一般にLDLをLDKコレステロール、HDLをHDLコレステロールといいます。
さらに、何らかの理由で体内にLDLが多過ぎると、体の組織や血液にコレステロールが貯まってしまい、動脈硬化の原因になります。これが、LDLコレステロールが悪玉コレステロールといわれる理由です。
一方、HDLは全身の組織の余分なコレステロールを回収する働きがあり、動脈硬化の原因となる血管の壁に張り付いたコレステロールも回収します。したがって動脈硬化の予防になるわけです。これがHDLコレステロールが善玉コレステロールといわれる理由です。
3.たんぱく質の特徴と働き
たんぱく質は体を構成する成分として重要なものです。主に骨や筋肉、内臓、血液、ホルモン、酵素、免疫物質等の材料になります。
1.他朴質の特徴と多く含まれる食品
たんぱく質は、肉類、魚介類、卵、牛乳・乳製品、大豆・大豆製品に多く含まれています。たんぱく質は体内で消化・吸収され、アミノ酸に分解されます。
(1)必須アミノ酸とは
アミノ酸はたくさんの種類が存在していますが、ヒトの蛋白質になるアミノ酸は全部で20種類です。そのなかでも、体内に合成できないか、あるいは合成できても必要量を供給できないものを必須アミノ酸といい、9種類あります。これらは食物から摂らなければなりません。
必須アミノ酸(9種類)
- ロイシン、イソロイシン、リシン(リジン)、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン(スレオニン)、トリプトファン、バリン、ヒスチジン
(2)アミノ酸スコアの考え方
食品の必須アミノ酸の組織によって、食品のたんぱく質の栄養価のよしあしが判定されます。このたんぱく質の栄養価を『アミノ酸スコア(アミノ酸化)』といいます。
アミノ酸スコアは『桶の理論』で説明されます。9枚の板(9種類の必須アミノ酸を意味します。)の高さが十分ある桶に水を汲めば、水を無駄なく利用する事が出来ます。しかし、1枚でも板が短いと、1番短い板までしか水をくめず、利用できる量が少なくなってしまいます。
つまり、9種類の必須アミノ酸のうち、1種類でも不足していると、カラダを作るたんぱく質を十分に合成できないことになるのです。
主な食品のアミノ酸スコア
食品 | アミノ酸スコア | 第1制限アミノ酸 |
---|
鶏卵(全卵)、豚肉、鶏肉、牛肉、牛乳、大豆、あじ、鮭 | 100 | |
---|
里いも | 84 | イソロイシン |
---|
じゃがいも | 68 | ロイシン |
---|
精白米 | 65 | リシン |
---|
ほうれん草 | 64 | リシン |
---|
にんじん | 59 | ロイシン |
---|
みかん | 50 | ロイシン |
---|
トマト | 48 | ロイシン |
---|
アミノ酸スコアは、最も高い場合に100と示されます。卵、肉類、魚介類、牛乳・乳製品、大豆は100ですが、精白米や野菜等のように100ではない商品でも、不足している必須アミノ酸を多く含む食品を一緒に摂取することでアミノ酸スコアを改善することが出来ます。これをたんぱく質の補足効果といいます。
2.たんぱく質の合成と分解のしくみ
ヒトのカラダは絶えず細胞が生まれ変わっています。新しい細胞を作るためには、たんぱく質は欠かせないものです。
食品からたんぱく質を摂取すると、食物中のたんぱく質はたんぱく質分解酵素によってアミノ酸に分解され、小腸で吸収されます。その後肝臓へ送られ、大部分は血液に入り、カラダの各組織に運ばれ、そこで主にたんぱく質の合成に利用されます。
3.たんぱく質の摂取のっポイント
たんぱく質が体内で利用されるためには、ビタミンB6が必要です。ビタミンB6はまぐろ、鮭、鶏むね肉、バナナなどに含まれています。なかでも、まぐろ、鮭、鳥むね肉はたんぱく質とビタミンB6の両営養素を含んでいるため、効率的といえます。
たんぱく質の必要量は様々な条件によって異なります。摂取のポイントを、ケース別にみてみましょう。
(1)運動との関係
激しい運動をすると体内のたんぱく質がこわされるので、新しい筋肉などを作るためにたんぱく質の必要量は増えます。筋肉を増やしたい場合には、運動直後のたんぱく質摂取が効果的です。
また、激しい運動後のたんぱく質の摂取は、披露した筋肉の回復に効果があります。
(2)感染症・外傷の治癒
感染症や外傷などでは、感染・外傷部位を修復するためにはたんぱく質の必要量は増えます。たんぱく質を摂らなければ治りにくく、完治に時間がかかります。
(3)ミネラルとの相互作用
鉄やカルシウムは、たんぱく質と一緒に摂取すること吸収率が高まります。
4.ビタミンの特徴と働き
ビタミンの「ビタ(VITA)」はラテン語で『生命』という意味です。生命に大切なものであることから「ビタミン」と命名されました。カラダの機能を正常に働かせたり、維持したりする役割を持ち、現在、13種類のビタミンが認められています。
1.ビタミンの特徴
ビタミンは、3大栄養素である炭水化物、たんぱく質、脂質の代謝をサポートする有機化合物です。ごく微量で代謝を手助けし、カラダの潤滑油のような働きをしています。ヒトは体内でビタミンを合成することがほとんどできないため、食物から摂取する必要があります。ビタミンが不足すると、それぞれのビタミンに特有の欠乏症を引き起こします。
2.ビタミンの種類
13種類のビタミンのビタミンは、溶解性の違いから、脂溶性ビタミン4種類と、水溶性ビタミン9種類に分類されます。脂溶性ビタミンはアルコールや油脂に溶けます。一方の水溶性ビタミンは水に溶けやすい物です。
分類 | 特徴 | 種類 |
---|
脂溶性ビタミン | 過剰に摂取すると肝臓に蓄積され、頭痛や吐き気を起こすことがある | ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK |
---|
水溶性ビタミン | 体内にほとんど貯蔵されないため、常に食物から摂取する必要がある。 | ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、葉酸、ビオチン、パントテン酸)、ビタミンC |
---|
ミネラルの特徴と働き
ははHヒトのカラダの95%は炭素、酸素、水素、窒素の4元素で構成され、残りの5%の元素がミネラル(無機質)です。
ミネラルは骨格を作ったり、カラダの機能を維持したりする微量元素です。体内で合成することはできないため、食物から摂取する必要があります。
1.ミネラルの種類
自然界には100種類以上のミネラルが存在します。そのうちカラダを構成するミネラルは約40種類あり、営養素として不可欠なものは必須ミネラルと呼ばれれ、現在16種類が挙げられています。そのなかで、体内に存在する量が多いものを多量ミネラルといい、といいます。
体内の主なミネラルの種類
多量ミネラル(7種類) | カルシウム、リン、カリウム、イオウ、ナトリウム、塩素、マグネシウム |
---|
微量ミネラル(9種類) | 鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、マンガン、モリブデン、クロム、コバルト |
---|
厚生労働省では『日本人の食事摂取基準(2015年版)』のなかで、必須ミネラルのうち、イオウ、塩素、コバルトを除いた13種類のミネラルについて1日に必要な摂取量の基準を定めています。
また、ミネラルは適量の幅が狭く、過剰量や欠乏症を起こしやすい物があるため、上限量や目標量が定められている物もあります。
ちなみに、日本人に不足しがちなミネラルはカルシウムと鉄で、過剰になりがち麻ミネラルはナトリウムとリンです。
2.ミネラルの働き
ミネラルの主な働き
| 主な働き | 主なミネラル |
---|
カラダを構成する | 骨や歯など固い組織を作る | カルシウム、リン、マグネシウムなど |
---|
筋肉や臓器、血液など軟らかい組織を作る | カルシウム、カリウム、ナトリウム、リン、鉄、亜鉛など |
カラダの調子を整える | 体液に溶けて血液のpHや浸透圧を調節する | カルシウム、カリウム、ナトリウム、リン、塩素など |
---|
生理活性物質や神経伝達物質などを作る材料となる | カルシウム、イオウ、マグネシウムなど |