タイは、人口の90%以上が仏教を信仰している、世界でも3本の指に入る仏教国です。
一方、日本における仏教徒の割合は71.5%で、他の宗教と比べると圧倒的多数でありますが、タイに比べると日常の中で仏教を強く意識するような場面は多くありません。
日本とタイは仏教がメジャーであるという共通点であるものの、タイでは多くの若者が出家しており、仏教に対する意識が根本的に異なっているようです。
同じ「仏教」でも、日本とタイでは中身が全く異なります。
日本に伝わる仏教は「大乗仏教」と呼ばれ、出家した僧侶や民衆を救うための教えです。
タイに伝わる仏教は「テラワーダ仏教(上座部仏教)といって、自分を救うのは自分自身であり、その人自身が徳を積むことで救われるという教え方です。
自分自身で徳を積む(タンブン)という姿勢が根付いているからこそ、タイでは生活の中に仏教が入り込んでいます。
タイの人にとって、タンブンは生活を営む上でも大切なことです。
中でも出家して僧侶になることは、最上のタンブンだと考えられています。
ちなみに、女性の場合は出家ができないので、息子を出家させることが最上のタンブンとされています。
出家した僧侶は、必ずサンガと呼ばれる僧侶の集団に属することになります。
このサンガの経済的な基盤を支えているのが、出家していない人たちです。
托鉢をする僧侶に、お布施や食べ物をささげることで、出家していない人たちはタンブンを積めば、将来はもちろん、来世の幸福が約束されると考えられています。
タイの人がタンブンを積むその根拠には、よい行いを為せばよい結果を、悪い行いを為せば悪い結果を得るという因果応報の考え方が存在します。
そのため、タイでは裕福な人や社会的に有力な人のことを「ブン(徳)が多い」といいます。
現在の自分の地位があるのは、現世や前世で積んできたブンのおかげ、というわけです。